| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-215  (Poster presentation)

種の共存は生態系の安定性にどのように影響するか? 理論と実験
How does species coexistence affect ecosystem stability? Theory and experiments

*上野尚久, 山道真人(国立遺伝学研究所)
*Takahisa UENO, Masato YAMAMICHI(NIG)

最近の研究により、種多様性は変動環境によって維持される一方で、生態系機能の変動を抑え安定化させることが明らかになってきた。しかし、これらのトピックは共存理論と多様性–安定性の関係の文脈で別々に研究されてきた。そのため、種多様性が維持されるメカニズム(振動依存の種共存機構)と種多様性がもたらす帰結(安定性における多様性効果)の関係性は明らかになっていない。そこで本研究では、数理モデルの数値計算により、変動環境における種共存機構の違いが生態系の安定性に与える影響を検証した。まず、複数種からなる群集における総個体数の安定性(変動係数の逆数)を単一種のみの個体群動態から予測される期待値と比べ、多様性効果を求めた。その結果、多様性–安定性の関係は種共存機構に依存することが明らかになった。「ストレージ効果」によって種が共存する場合、環境変動に対する応答が種ごとに異なるため、各種の個体数変動に非同期が生じ、互いに相殺されて総個体数の変動は安定化する傾向にあった。一方、「競争の相対的非線形性」による共存は、必ずしも変動を安定化しなかった。これは、一部の種が資源量の変動を増幅させ、他種の個体群動態が不安定化するためである。次に、多様性効果を分解し、安定化に貢献するメカニズムを比べた。ストレージ効果が働く場合、個体群動態が非同期的な種が多くなるほど群集の総個体数が変動しにくくなるポートフォリオ効果が安定化に強く寄与していた。一方、相対的非線形の場合でもポートフォリオ効果は見られたものの、各種の個体群変動の同期による不安定化がそれを大きく上回っていた。本成果は、変動環境において生態系機能を安定化させるためには、種多様性の維持機構を考慮することが重要であることを示唆している。今後は緑藻類を用いて、栄養塩などの環境変動を加えたマイクロコズム実験を行ない、理論予測の検証に取り組む予定である。


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