| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-219  (Poster presentation)

交尾型・非交尾型を有する海産カジカ科魚類の精子・精漿関連遺伝子の網羅的発現解析
Comprehensive Transcriptomic Analysis of Sperm and Seminal Plasma-Related Genes in Copulatory and Non-copulatory Marine Sculpins

*伊藤岳(琉大熱生研), 守田昌哉(琉大熱生研), 橋口康之(大阪医薬大), 武島弘彦(福井里山里海湖研), 梁田椋也(生物技研(株)), 安房田智司(大阪公大院理)
*Takeshi ITO(Univ. of the Ryukyus), MASAYA MORITA(Univ. of the Ryukyus), Yasuyuki HASHIGUCHI(Osaka Med. Pharm. Univ.), Hirohiko TAKESHIMA(Satoyama Satoumi Res. Inst.), Ryoya YANADA(Bioengineering Lab. Co., Ltd.), Satoshi AWATA(Osaka Metropolitan Univ.)

体外受精から体内受精への受精様式の進化は、精子の運動環境を大きく変化させるため、精子の形態や運動性は適応的に進化すると考えられてきた。しかしながら、カエル類はほぼ体外受精種、哺乳類はすべて体内受精というように、受精様式は系統的な制約を受けるため、その影響を実験的に比較できる系は限られている。海産カジカ科魚類は、近縁種に体外受精種と、交尾により精子を雌の体内に送り込む体内配偶子会合(IGA:交尾を行うが受精は体外)をもつ種が混在する稀有な分類群である。近年、系統種間比較により精子全長は両繁殖様式で差がないこと、体外受精種では鞭毛にfin構造が見られること、IGA種では精子の頭部が伸長することが明らかになった。そこで本研究では、繁殖様式の進化に伴う分子基盤の進化を調べるため、同属で異なる繁殖様式をもつ海産カジカ(Artedius属)をモデルに解析を行った。Artedius属2種6個体の精巣のde novo RNA sequencesの結果、1299個の発現差異遺伝子が見つかり、そのうち592個が体外受精種で、707個がIGA種で発現増加していた。発現増加遺伝子をGO 解析したところ、体外受精種では機械刺激応答や突起形成、IGA種では代謝や解糖系に関わる機能が有意に多く含まれた。また、発現増加が見られた遺伝子が他種でも同様に発現増加しているかを調べるために、22種のde novo RNA seq(体外受精:7種、IGA:15種)を行ったところ複数の遺伝子が同様のパターンを示した。さらに、LC-MS/MSによりArtediusの精子発現タンパク質を同定したところ、体外受精種ではカドヘリンやWDリピートタンパク質が多く同定され、fin構造に関与する可能性が示唆された。一方、IGA種ではミトコンドリア機能酵素やアミノ酸トランスポーターが多く同定され、エネルギーの消費様式(運動性や卵巣での貯蓄など)が異なる可能性が示唆された。本研究により、繁殖様式の進化に伴って、特定の機能を持つ遺伝子やタンパク質がカジカ科魚類全体で平行進化した可能性が示された。


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