| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-220 (Poster presentation)
ミュラー型擬態では、複数の種が警告シグナルを共有して捕食者の忌避学習を促し、捕食リスクを減らす。この互恵性は警告シグナルの均一化をもたらすと考えられるが、実際には警告シグナルに多様性が見られ、議論の的となっている。未解決の課題として、異なる擬態環の持つ警告シグナル間の中間型の存在がある。中間型では各擬態環から得られるベネフィットは減少もしくは無効化していると考えられるためである。ミドリババヤスデ種複合体は、本州、四国、九州でアマビコヤスデ属と灰色擬態環を、本州中央部にて近縁種とオレンジ擬態環を形成していると考えられるが、本州、四国、九州にて灰色とオレンジの中間型の集団(種)が存在する。RAD-seq系統に基づく体色の祖先状態復元から、東海・関西のミドリババヤスデ種複合体では灰色擬態環形成後に集団(種)間にて、(A)灰色からオレンジへの移行、(B)灰色から中間型への移行、(C)オレンジから中間型への移行、(D)中間型からオレンジへの移行(オレンジ擬態環の形成)、といった灰色とオレンジの擬態環を伴う警告色の多様化が生じたと推測された。中間型集団については、次の3点から灰色集団とオレンジ集団の交雑以外の起源が考えられる。(1)東海・関西では、灰色、中間型、オレンジの集団が地理的モザイク状に分布し、灰色集団とオレンジ集団の間に中間型集団が分布するパターンではない。(2)東海・関西の1集団にて、中間型とオレンジの集団内2型が存在する。(3)中間型集団は、オレンジ集団の分布しない本州、四国、九州の広い地域で、灰色集団と共に分布している。よって、中間型の適応度は、擬態に代わる何らかのベネフィットにより低下しておらず、それが体色間の移行を促し、上記(1)の東海・関西での灰色、中間型、オレンジの3色集団の地理的モザイク状分布という擬態環を伴う特異な警告色多様化に寄与しているのかもしれない。