| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-221 (Poster presentation)
多倍数体化は植物や脊椎動物の繁栄の鍵となった。しかしながら、多倍数体化直後には細胞内プロセスの調和が乱されるため、長期存続し種分化に至るケースは少ない。この主要な困難の一つが核型不安定化による適応度の低下であるが、核型の大きな変化は急速な種多様化につながりうる。シマドジョウ属魚類には、複数回の4倍体化が知られ、祖先親種が現存するタイムスケールの進化現象であるため、脊椎動物における多倍数体化が生じる機構とその後のゲノム進化特性を調べる良い対象である。特に、4倍体であるヤマトシマドジョウ種群では、染色体数の著しい地域変異がみられ、多倍数体化による核型の不安定化が示唆される。本研究では、核型の異なる複数の4倍体シマドジョウ属魚類に加え、祖先親種候補の2倍体種(チュウガタスジシマドジョウ、トサシマドジョウ)について染色体品質のゲノムを決定した。そして、脊椎動物における多倍数体化が生じる要因と、核型不安定化をはじめとする多倍数体化初期のゲノム進化特性を明らかにするために、候補祖先2倍体親種間のゲノム構造の違い、シマドジョウ属4倍体のゲノム組成、染色体数変化の傾向を調べた。その結果、候補祖先2倍体種間において、染色体数が異なるもののシンテニーは良く保たれており、異質倍数化の要因として、染色体構造の違いは支持されなかった。また、ヤマトシマドジョウ種群は、ゲノムワイドにスジシマドジョウ型とシマドジョウ型からなる染色体ペアをもつ異質4倍体だった。染色体数の多様化は染色体の喪失・獲得ではなく、染色体融合で生じていた。融合した染色体の由来する組み合わせは祖先親種間・内どちらのペアもあり、また、同祖ではない染色体の融合が多く見られた。本研究がもたらすシマドジョウ属魚類のゲノムリソースは、多倍数体化に伴う核型の安定・不安定化機構を追究する礎となる。