| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-222  (Poster presentation)

ゲノム解析に基づくイトヨとニホンイトヨの交雑域の推定
Hybrid zone between the three-spined stickleback and the Japan Sea stickleback revealed by genome sequencing

*遠藤優(国立遺伝学研究所), 永野惇(名古屋大学, 慶應義塾大学), Dmitry LAJUS(University of Tartu), 山﨑曜(国立遺伝学研究所), 北野潤(国立遺伝学研究所)
*Yu ENDO(National Institute of Genetics), Atsushi J NAGANO(Nagoya University, Keio University), Dmitry LAJUS(University of Tartu), Yo YAMASAKI(National Institute of Genetics), Jun KITANO(National Institute of Genetics)

自然界で生じる交雑の有無や頻度は、環境変動の影響を受けると考えられている。そのため過去から現在に至る交雑動態を解明することは、環境変動に伴う生物集団の地理的分布の変化や種分化過程を理解する上で重要である。では、遺伝子流動が続いている近縁種同士において、遺伝的分化がどのように維持されつつ、交雑の痕跡が集団中に保持あるいは排除されていくのだろうか?
この問いを検証するため、本研究では北海道東部地域に同所的に分布するイトヨとニホンイトヨに着目した。両種は当該地域で交雑が確認されている一方、現在に至るまで明確な生殖隔離が維持されている。しかし、交雑がどの程度の地理的範囲まで続いているかはわかっていない。また、イトヨは北半球の広範囲に分布し、現在では日本近海を除きニホンイトヨと生息域が重複していないが、過去に交雑が生じていた場合、その痕跡は現在でも集団中に残っている可能性がある。
よって二種の交雑域および過去の交雑を遺伝的に検証するため、日本近海からベーリング海にかけて採集されたイトヨ属を対象に、縮約ゲノム解析の一種であるddRAD-seqを実施し、北海道から北米大陸にわたって分布するイトヨの全ゲノムデータと合わせ、集団遺伝解析を実施した。日本近海のイトヨ属のうち、千島列島で捕獲されたイトヨ属は大半がイトヨであり、雑種は数個体にとどまった。雑種は全てF2で、戻し交配は確認されなかった。一方でサハリンではニホンイトヨのみ確認された。また系統間の遺伝子流動を推定するƒ4統計では、北海道東部地域のイトヨとニホンイトヨの間でのみ、交雑が統計的に有意に支持された。
先行研究で、イトヨとニホンイトヨは求愛行動が異なり、一部の雑種は不稔であることが分かっている。こうした環境変動以外の要因が、遺伝的分化を保っていると考えられる。


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