| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-223 (Poster presentation)
交尾や繁殖に関わる性的形質では、オスとメスで進化の方向性が正反対になる場合があり、性的対立と呼ばれる。性的対立には、オスとメスで正反対の選択圧が同じ遺伝子座に影響する場合(遺伝子座内性的対立)と、別々の遺伝子座が関わる場合(遺伝子座間性的対立)があり、両者では進化の帰結が異なると考えられている。したがって、性的形質の進化を理解するには、どちらのタイプの性的対立が働いているのかを見極めることが重要である。しかしこれまでの研究では、雌雄間の遺伝的相関や、同じ遺伝子が雌雄の形質に影響するかを検証した例が少なく、遺伝子座内・遺伝子座間の性的対立が性的形質の進化に与える影響は十分に明らかになっていない。
オオオサムシ亜属では、交尾器の一部であるオスの交尾片とメスの膣盲嚢のサイズに著しい種間差が存在しており、両者のサイズの進化には性的対立が関わったと考えられている。そのため、交尾片と膣盲嚢のサイズに関わる遺伝子が雌雄両方で共通に働くかどうかは、両形質の進化の方向性を左右していた可能性がある。そこで本研究では、巨大な交尾片と膣盲嚢をもつドウキョウオサムシ(以下ドウキョウ)とその近縁種マヤサンオサムシ(以下マヤサン)を用い、同じ遺伝子が雌雄両方の交尾器サイズに関与するかを検証した。
昆虫における性決定遺伝子であるdoublesex(dsx)に注目し、dsxに対しLarval RNAi法を用いて遺伝子機能を阻害することで交尾器形態への影響を調べた。その結果、オスではドウキョウ、マヤサンの両方において交尾片を含む交尾器が矮小化した。一方、メスではドウキョウ、マヤサンの両方で形態が変化したものの、サイズへの影響はドウキョウのみで見られた。本研究の結果は、dsxがドウキョウでは交尾片と膣盲嚢の両方で、マヤサンでは交尾片のみでサイズに関わることを示しており、ドウキョウでは雌雄の交尾器サイズの進化の際に遺伝子座内性的対立がもたらされうることを示唆している。