| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-229  (Poster presentation)

渓畔林の土壌における福島第一原子力発電所事故に由来する90Srの存在形態の推定
Existing Form of Radiostrontium derived from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident in Soil of Riparian Forest

*菊地青菜(近畿大学大学院), 苅部甚一(近畿大学)
*Seina KIKUCHI(Grad.Syst. Eng.,  Kindai Univ.), Zin'ichi KARUBE(Kindai Univ.)

 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所(原発)事故により、放射性ストロンチウム(90Sr)が大気中へ放出され、主に北西方向へ沈着した。その後、土壌から河川へ移行し水生生物に取り込まれていることが指摘されている。しかし、土壌から河川への溶出挙動は十分に解明されていない。そこで本研究では、土壌中の90Srの河川への溶出挙動を理解するために、土壌中での90Srの溶出のしやすさ(水溶性など)に関連すると考えられる化学的存在形態に着目し、その形態を逐次抽出法によって評価することを試みた。
 本研究では、福島県浪江町を流れる請戸川流域の小河川の渓畔林において2024年に採取した表層土壌を使用した。90Srの存在形態を評価するための逐次抽出法では、抽出試薬を変えながら水溶性、酸可溶性、還元性、酸化性に区分し、最後まで抽出されず土壌に残った90Srは残渣とした。この抽出は、安定Srについても実施した。
 逐次抽出の結果、土壌の全分解により得られた90Srの総量を基準(100%)として各画分の割合を算出したところ、水溶性37%、酸可溶性43%、還元性11%、残渣9%であり、酸化性では0%であった。一方、安定Srは水溶性1%、酸可溶性12%、還元性5%、酸化性2%、残渣80%となった。90Srは水溶性および酸可溶性に約8割が存在しており、大部分が可溶性の形態で保持されていることが明らかとなった。これらの形態は降雨時の溶脱を経て河川への移行に寄与する可能性が高い。これに対し安定Srの大部分は残渣画分に存在し、土壌中では難溶性の形態と推測される。この違いは両者の起源の違いによるものと考えられる。安定Srは母岩に由来するが、90Srは原発事故により大気を経由して土壌に沈着した外来起源である。原発事故時には放射性核種が海水由来成分とともに大気中へ放出したとされ、比較的可溶性の高い形態で沈着した結果、土壌中には水溶性・酸可溶性画分に多く存在していると考えることができる。


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