| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-230 (Poster presentation)
樹木のリター(落葉落枝、落花)から放出される溶存態の炭素および窒素は、森林土壌における微生物の活性や組成に影響を与えている。なかでも花は、繁殖器官であるため窒素やリンの含有率が高く、初期段階の分解が速いという報告があるが、詳細な検討例は少ない。本研究では、ブナとミズナラ、サワグルミ、トチノキの花および葉リターから分解初期に溶出する水溶性画分を定量することを目的とし、1)水溶性画分の浸出でリターの重量はどれだけ減少するか、2)水溶性画分の浸出量はどのように経時変化するか、3)樹種や器官によって炭素、窒素、リンの水溶性画分の含有率はどれだけ異なるかを室内実験で検討した。
落下直後の花リターと落下後間もない葉リターを風乾したものを実験に供した。イオン交換水による振とう浸出液を回収後、水を入れ替えて再度振とうする作業を繰り返した。花リターでは計12回585分(ただし、サワグルミの花リターのみ計24回1305分)、葉リターでは計12回720分振とうした。回収した浸出液に対し、水溶性の炭素、窒素、リン濃度を定量した。
実験後のリターの質量残存率は、花で57.5~88.1%、葉で92.8~98.1%であった。すなわち、花は葉と比較して、水溶性画分の浸出のみでリター重量が大幅に減少し、その減少率は樹種間差もみられた。花リターの水溶性窒素と水溶性リン濃度はともに高く、振とう開始300分頃までにほぼ全量が浸出した種もあった。一方、葉リターでは浸出に一貫性は見られず、水溶性画分が少しずつ浸出し続けた。
以上より、水溶性画分の浸出は、特に花リターの分解において大きな重量減少をもたらすことが分かった。これは花リターの分解によって多量の養分が森林土壌へ供給されることを示唆するものだが、その具体的な貢献度については今後の課題である。