| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-231 (Poster presentation)
永久凍土は、北方林生態系における植生や物質循環を強く規定する主要な環境因子の一つである。近年の急速な温暖化に伴い、永久凍土の融解や活動層の増大が進行し、それに伴う生態系機能への影響が懸念されている。しかし、凍土融解や活動層増大が土壌や植生に及ぼす影響については、依然として十分に解明されていない。本研究では、アラスカ内陸部の永久凍土上クロトウヒ疎林において野外昇温実験を実施し、永久凍土融解に伴う土壌および植生の応答を評価した。昇温区において長さ1mのヒーターを鉛直に埋没し、2023年春より昇温を開始した。また、昇温区および対照区において、土壌呼吸観測、土壌栄養測定、リター分解実験、葉形質測定を実施した。昇温3年目の2025年には、昇温区の活動層厚は約180㎝となり、対照区(約88㎝)の約2倍に達した。土壌呼吸は2023年と2024年には顕著な変化が認められなかったものの、2025年には昇温区において対照区の約4.7倍のCO2放出が観測された。土壌栄養については、昇温処理によってアンモニウム態窒素の可給性が増加したものの、その増加分は速やかに植物に吸収・利用されている可能性が示唆された。葉スケールの植物応答としては、常緑性植物に比べて落葉性植物の方が応答が早く、昇温処理によってより獲得的な葉形質へと順応していることが示唆された。以上の結果から、永久凍土融解の初期段階において、活動層の増大は土壌や植物の特性を著しく変化させることが示唆された。