| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-242 (Poster presentation)
山陰の森林では冬季に特に窒素沈着量が大きいことが知られている。豪雪地帯では積雪のため沈着した窒素が地表にとどまる期間が長いが、豪雪境界域では降雪から融雪までのサイクルが短く、沈着した窒素は容易に土壌に浸透する。しかし、このような土壌への窒素流入様式の違いが、土壌からの窒素溶脱にどのように影響するのか、研究事例は少ない。本研究では、積雪―融雪サイクルの異なる2カ所のスギ人工林において、冬季の土壌水および渓流水のNO3-濃度とδ15N・δ18Oを評価した。調査地は豪雪境界域の島根大学三瓶演習林と豪雪地帯の鳥取大学蒜山演習林の2カ所のスギ人工林とし、2023年11月から2024年4月にかけて土壌水および渓流水を採水した。
30cm深土壌水のNO3-濃度は、三瓶と蒜山のいずれにおいても秋から冬にかけて低下した。三瓶においては冬季に硝酸イオンのδ18Oの上昇が認められ、降水NO3-が土壌水中に含まれることが示唆される。一方蒜山ではそのようなδ18Oの上昇は認められず、土壌中のNO3-は硝化由来が優占したと考えられる。蒜山では土壌水NO3-のδ15Nがやや大きく、脱窒作用を受けた可能性がある。これらの結果は、積雪―融雪サイクルの違いによって、表層土壌のNO3-の生成プロセスが異なることを示している。
蒜山の渓流水のNO3-濃度は、秋から冬にかけてやや上昇し、春に低下した。一方で三瓶では、秋から冬、春にかけて減少していた。この間、渓流水NO3-のδ18Oには顕著な変化は見られず、積雪NO3-の融雪時の直接流出の影響は認められなかった。蒜山では三瓶に比べ低い渓流水NO3-の濃度とやや大きなδ15Nがみられ、土壌中の窒素動態を反映していることが考えられた。