| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-244 (Poster presentation)
樹木細根(直径<2mm)は土壌酸性度に応じてその量や形態を変化させる。特に、極端に酸性で貧栄養な条件では、細根が土壌表層に密集してルートマットを形成することがある。従来、ルートマットは熱帯雨林や温帯林で樹木の養分獲得の視点で研究が進められてきたが、土壌生態系、特に土壌有機物に与える影響は見逃されてきた。細根は土壌有機物の量や質を制御しうるため、ルートマットが厚く発達するほど直下のA層土壌の炭素蓄積量が多いのかを先行して調べたところ、ルートマットではなく、A層の細根量が土壌炭素蓄積量に強く正の影響を与えていた。そのため、ルートマットの発達は土壌有機物を量的には支配しないが、その組成を改変すると我々は予想した。よって本研究の目的は、酸性土壌に発達したルートマットが土壌有機物組成に与える影響を明らかにすることである。調査地は、これまでと同じく、あいち海上の森・ヒノキ人工林(砂礫層地域と花崗岩類地域で各8地点)である。どの地点もリター層、ルートマット(腐植層を含む)、A層という層序を持ち、A層土壌のpH(H2O)が4を切る。砂礫層地域では特にpHが低く、ルートマットの発達も顕著である。採取したA層土壌の有機化合物組成を熱分解ガスクロマトグラフィー・質量分析で得て、環境要因との関係を解析した。その結果、ルートマットの発達程度(ルートマット厚とリター層厚の比)が高い地点では脂肪族アルコールの割合が高かった。また、土壌pHが低い地点では窒素含有化合物の割合が低かった。地質間差についても、ルートマットが発達し、土壌pHが低い砂礫層地域では花崗岩類地域よりも脂肪族アルコールの割合が高く、窒素含有化合物の割合が低かった。従って、ルートマットの発達は土壌酸性度の高さと相まって、土壌有機物組成を植物由来優位・微生物由来の相対的低下にシフトさせうることが示唆された。この一連の特徴が揃う砂礫層地域で有機物組成が土壌機能に及ぼす影響を、今後検証する必要がある。