| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-245 (Poster presentation)
植物の窒素(N)やリン(P)の吸収速度は、土壌の栄養塩の利用可能性だけでなく、細根の形態や種特異的な資源利用戦略によって規定されうる。激しい土壌風化によりP欠乏にさらされやすい熱帯林において、優占する樹木種や森林更新時に素早く成長する必要があるパイオニア種は土壌水中の無機態Pを取り込むための潜在的な吸収能力を高めている可能性がある。ところが、熱帯林において無機栄養塩の吸収能の重要性を検証した研究はほとんどない。そこで本研究では、マレーシア・サバ州の熱帯低地林の野外施肥試験地{4処理(対照・N・P・NP)}において、栄養液を入れたシリンジに細根を入れて培養し、潜在的な栄養塩吸収能(濃度一定の溶液からの栄養塩吸収速度)と根の形態(根バイオマス当たりの長さ、SRL)を測定した。遷移後期種の優占種であるフタバガキ科2種と、遷移後期の非フタバガキ科3種、および遷移初期のトウダイグサ科2種を対象とすることで、栄養塩欠乏に対する無機態N・Pの吸収能力の変化と、その種・機能群間差を検証した。
フタバガキ科やパイオニア種において、P施肥によるPO43-吸収能の低下が見られた。このことから、優占度の高い極相フタバガキや成長速度の速いパイオニア種は、P欠乏下でPO43-吸収能を高く維持しているとする仮説が支持された。またPO43-吸収能は、種・機能群に関わらず対照・N施肥区においてSRLと正の相関関係が見られた一方、P・NP施肥区では見られなかった。これらの結果は、P吸収能とSRLの協調的な変化がP欠乏下におけるP獲得戦略として重要である可能性を示唆している。対照的に、N施肥によるN吸収速度の変化はほとんど見られなかった。これは、熱帯域では温帯域に比べてN欠乏にさらされにくいためかもしれない。これらの結果は、P欠乏下の熱帯林におけるP吸収の調節能の重要性を示唆しており、種・機能群間の栄養塩獲得戦略の差異も反映していると考えられる。