| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-249 (Poster presentation)
日本に存在する大型のタケにモウソウチク,ハチク,マダケがあり,これらが林冠を優占する竹林生態系はいずれも森林に劣らないバイオマス量や炭素・窒素吸収量を有する。その一方,放棄された状態が続くと稈密度が非常に高くなり,林床が暗くなって林床の生物多様性が失われる。タケの生理・生態的特性は,樹木と多くの点で異なり,その一つに長周期で一斉開花した後に枯死するという特性が挙げられる。現在,全国的にハチクが約120年に1回の開花期を迎えている。開花した後にほぼすべての稈が枯死するため,ハチク林生態系が有していた様々な生態系機能が急速に変化することが考えられる。特に植物-土壌間の物質循環機構が大きく急変することで,生態系の炭素吸収・養分保持機能や水質浄化機能が低下する可能性が考えられるが,その実態については研究事例がほとんどなく,不明である。本研究では,開花ハチク林の土壌養分動態を調査することで,開花後の土壌養分保持機能の変化を明らかにすることを目的とした。調査は東京大学犬山試験地内にある2024年に開花したハチク林で行った。開花後に皆伐したハチク林(FC),開花後も手入れしていないハチク林(FU),開花したハチクと非開花のマダケが混交している竹林(MU),非開花ハチク林(UF)の4サイトで,土壌深度10cmおよび50cmの土壌水を月に1度程度の頻度で1年間採取した。土壌水は水トールを用いて採水し,採水後は直ちに冷蔵して実験室に運び,イオンクロマトグラフを用いて主要陽イオン・陰イオン濃度を測定した。FC,FU,MUともUFに比べて硝酸イオン濃度が土壌深10cm,50cmとも高い期間があり,特にFCでは夏季に高濃度が検出された。一方でFUでは,夏季以降硝酸イオン濃度の低下傾向が認められた。FUでは開花後に矮小化した稈が多数再生しており,これらが枯死した親稈に代わって土壌の養分保持能力を維持している可能性が考えられた。