| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-250 (Poster presentation)
微生物による土壌有機物の分解(土壌微生物呼吸, Rh)は温度依存性が強く、温暖化による大気中へのCO2放出の促進が懸念されている。一方、気候変動に伴い、降雨量あるいは降雨強度の変動も世界各地で起きており、今後の陸域生態系のCO2収支を精緻に予測するには、温度とあわせて水分に対するRhの応答も理解する必要がある。本研究では、冷温帯の針葉樹林と落葉広葉樹林を対象に、Rhの温度応答に対する土壌水分の影響を実験的に調査した。北海道大学苫小牧研究林内のトドマツ人工林とミズナラが優占する落葉広葉樹二次林のそれぞれで、10m×10mの林床面積の50%を屋根で覆い降雨を通年で遮断する処理区と、遮断を行わない対照区を設定した。各実験区内に、植物根の侵入を防止するためのトレンチ(30cm四方、深度30cm)を4反復設置し、設置から10か月後の2025年5月から11月にかけて、トレンチ内のRh、土壌水分および地温を約10日間隔で計19回観測した。対照区の地温と土壌体積含水率(%)は2.1~22.7℃、37~50%の間で変動し、いずれの林分でも降雨遮断処理によって土壌体積含水率が最大9%、期間平均4.9%低下した。Rhは0.9~2.8 μmol m-2 s-1(針葉樹林)、0.7~2.1μmol m-2 s-1(落葉広葉樹林)のレンジで季節変動を示し、地温と指数関数的な関係を示した。近似した指数関数の係数に対する森林タイプおよび降雨遮断の影響を解析した結果、Rhの温度感度(Q10値)にはいずれの要因も有意に影響しなかった。一方、切片項は広葉樹林よりも針葉樹林で高く(p=0.05)、降雨遮断処理によって低下する傾向にあった(p=0.09)。なお、風乾土の水抽出液中の全窒素濃度は広葉樹林よりも針葉樹林が有意に高かったが(p=0.02)、降雨遮断の影響は認められなかった。これらの結果は、降雨量減少による乾燥化は微生物による土壌有機物分解を一時的に減衰させるものの温度応答には直接影響しないこと、その傾向自体は針葉樹林と落葉広葉樹林で大きく変わらないことを示している。