| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-252 (Poster presentation)
里山における生物多様性の低下を食い止める手段の一つとして,耕作放棄地の湿地ビオトープ化が挙げられる.湿地ビオトープが持つハビタット機能を規定する要因としては,圃場の管理手法/頻度の違いや,各圃場が持つ構造(圃場の周囲長や水際の形状)の違い等が考えられるが,これらの違いが圃場内に生息する水生生物群集に与える影響を複合的に解析した研究は極めて少ない.本研究では,湿地ビオトープにおける管理手法/頻度および水際構造の違いが,圃場内の微小環境要因,植生,水生生物群集に与える影響を調査した.
本研究では,新潟県佐渡市に造成された5枚の湿地ビオトープを調査地とし,水辺構造の違いに基づき,通常型(方形の圃場),凹凸型(内畔が設置された圃場),迷路型(水域全体が水路状の構造で構成された圃場)の3タイプに分類した.各タイプの圃場内に計36個の調査プロット(1m四方)を設置し,各調査項目の測定および水生生物調査を実施した.調査は,2024年8月と10月および2025年6月の計3回実施した.
調査の結果,湿地ビオトープ内に生息する水生生物群集は,水際構造の違いに関わらず,圃場の耕起や泥上げの直後に個体数密度が増加することが示された.また,水生生物群集の中には,複雑な水際構造を持つ水域を選好するもの(Diptera,Gerridae),直線的な水際構造と深い水深を持つ水域を選好するもの(Ephemeroptera,Hemipteraの成虫),圃場内の耕起から十分な時間が経過し植生が発達した水域を選好するもの(Amphipoda,Anisoptera,Isopoda)等が存在した.
これらの結果は,造成した湿地ビオトープを水生生物群集の生息地として機能させるためには,定期的な維持管理作業が不可欠であることを示唆している.また,湿地ビオトープのハビタット機能を向上させるためには,同一空間内に水際構造や耕起作業からの経過時間が異なる水辺環境を並立させることが重要であると考えられる.