| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-253 (Poster presentation)
本研究は、千葉県富津市金谷の水田跡地に、新たに造成したビオトープにおいて、水生昆虫群集が定着し、種組成が形成されていく過程を定量的に解明することを目的とした。生物多様性保全を企図して創出されたビオトープに、他所からの飛来による自然発生のみで、新たな生態系が構築されていく初期動態を追跡することは、今後の保全活動における基礎的な知見を得るうえで重要である。ビオトープは2024年1月に造成した。調査は2024年3月から2025年9月まで11回実施した。採集には網目1mmのタモ網を用い、10人で20分間掬い採りをし、水生甲虫類、水生半翅類の種名と各種の個体数を記録し、季節による個体数の変動を比較した。
種数は5月から急速に増加し8種が確認され、特にキベリヒラタガムシやヤスマツアメンボは複数個体が確認された。その後、7月からさらに種数が増加し、8月、9月は最大種数である19種が確認された。調査を始めた1年目は7月から9月まで種数が増加し、秋以降は減少した。しかし、2年目は初夏までに種数の増減に大きな変化はなく、9月にのみ増加した。一方種組成は、1年目はシマゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウ、キイロヒラタガムシ、エサキコミズムシ、ヤスマツアメンボは急激に個体数を増したが、2年目は急激に減少し、見られなくなった種もいた。これは、各水生昆虫の持つ分散能力や生活史が、群集構造の初期形成に強く影響していることを示唆する。本研究で得られた水生昆虫群集の初期遷移に関する定量データは、人工湿地的に造成したビオトープにおける生態系再生のモデルケースとして重要である。