| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-255  (Poster presentation)

耕作放棄地が生物多様性と生態系サービスに与える影響の現状と課題
Current status and challenges of research on biodiversity and ecosystem services in abandoned agricultural land.

*小川みふゆ, 饗庭正寛, 吉田丈人(東京大学)
*Mifuyu OGAWA, Masahiro AIBA, Takehito YOSHIDA(UTokyo)

 耕作放棄は世界中で進行しており、生物多様性と生態系サービスへの影響が懸念されている。耕作放棄地が生物多様性と生態系サービスに与える影響に関するレビューは世界各地で行われているものの、耕作放棄の定義の不統一や、放棄牧草地の抽出における技術的課題などにより、農地種別を考慮した議論は十分とは言えない。日本は水田が農地面積の54%を占め、残り46%を畑、果樹園および牧草地が構成するという特徴がある。放棄された水田、畑、果樹園、および牧草地では、それぞれ異なる二次遷移のプロセスが生じることが指摘されているが、農地種別を考慮した体系的なレビューは行われていない。そこで本研究では、日本の耕作放棄地における生物多様性と生態系サービスに関する研究を体系的に収集し、農地種別と対象分類群に着目し、現状と研究ギャップを明らかにすることを目的とした。
 日本の耕作放棄地に関する研究は1990年代以降に増加しており、調査地域は全国におよんでいた。農地種別では放棄水田を対象とした研究が多く、生物多様性への影響は正負両方の評価結果が報告されていた。放棄された畑、果樹園、および牧草地における研究例は少なかったが、放棄牧草地に関する限られた研究では、生物多様性に対する負の影響が正の影響を上回って報告されていた。対象分類群別では、鳥類において正の影響が負の影響を上回る一方で、昆虫類では負の影響が多く報告されていた。維管束植物については、放棄水田と比較して、水田以外の耕作放棄地では負の影響が多く報告されていた。一方、耕作放棄が生態系サービスに与える影響の定量的な評価は少なかった。これらの結果から、放棄水田と水田以外の耕作放棄地では、生物多様性への影響が異なる可能性が示された。とくに、放棄された畑、果樹園および牧草地を対象とした研究の蓄積と、生態系サービスの定量的な評価が今後の課題である。


日本生態学会