| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-259  (Poster presentation)

国内企業のTNFD開示の定性分析:開示の特徴とネイチャーポジティブに向けた課題の整理
Qualitative Analysis of TNFD Disclosures by Japanese Companies: Clarifying Disclosures Characteristics and Challenges to Achieving Nature-Positive

*鬼頭健介(みずほRT), 辻井美帆(みずほRT), 古川笑(みずほRT), 樽見知樹(みずほRT), 山口圭太(みずほRT), 奥田直哉(みずほRT), 井上知也(みずほRT), 高田モモ(産総研), 岩崎雄一(産総研), 内藤航(産総研), 保高徹生(産総研)
*Kensuke KITO(Mizuho RT), Miho TSUJII(Mizuho RT), Emi FURUKAWA(Mizuho RT), Tomoki TARUMI(Mizuho RT), Keita YAMAGUCHI(Mizuho RT), Naoya OKUDA(Mizuho RT), Tomoya INOUE(Mizuho RT), Momo TAKADA(AIST), Yuiichi IWASALO(AIST), Wataru NAITO(AIST), Tetsuo YASUTAKA(AIST)

2023年のTNFD開示提言の公表以降、多くの企業が自然資本分野の情報開示を始めて、ネイチャーポジティブに向けた取組を進めている。一方で、企業のTNFD開示はまだ試行的な開示の段階の企業も多く、今後開示レベルを向上させていくことが必要である。そこで本研究では、国内企業のTNFD開示内容を分析し、今後の開示レベル向上の方向性や課題・ニーズ等を整理した。

日経500種平均株価の対象銘柄のうち、TNFD開示を実施している約150社の企業の開示内容を分析対象とした。多くの企業が採用している評価の手順・LEAPアプローチに沿って、直接操業・サプライチェーン上流で、それぞれ優先地域・依存・影響・リスクの4項目 (計8項目)ごとに、開示レベルを評価した。優先地域の開示内容は「評価基準の数」「評価の空間解像度」の観点で5段階評価、依存・影響・リスクの開示内容は、「自然の地域性の考慮の有無」と「定量評価か定性評価か」の観点で5段階評価した。最終的に各項目の評価結果を総合して、各企業の開示内容をスコア化した。

評価の結果、開示レベルは業種間で大きく異なっていた。食品、不動産、ゴムなどの業種では相対的に開示レベルが高かったが、精密機器やガスなどでは低く、今後の向上の余地があると考えられた。また、直接操業と比べて上流の開示が進んでいなかった。項目別にみると、優先地域は全体的に開示レベルが高く、IBATなどの汎用ツールの普及が背景にあると考えられた。一方で、依存・影響・リスクは、地域性を考慮していない定性評価を開示している企業が多く、地域性と定量性の観点で課題が見られた。定量評価をしている一部先進企業に限って傾向を見ると、陸域・淡水生態系への依存・影響の大きさを定量評価している企業が多く、海洋生態系への依存・影響や自然の状態(State of Nature)の定量評価は限定的だった。当日は、これらの課題に対して生態学がどのように貢献し得るのかについて検討する予定である。


日本生態学会