| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-260  (Poster presentation)

灌木の空間分布を考慮した風食に対する植生指標のUAVを用いた推定と放牧強度の関係
Estimation of Vegetation Indicators for Wind Erosion Considering Spatial Distribution of Shrubs Using UAVs and Its Relationship with Grazing Intensity

*甲野耀登(東京大学), 成川央庸(東京大学), 大黒俊哉(東京大学), 黒崎泰典(鳥取大学)
*Akito KONO(The University of Tokyo), Yoh NARIKAWA(The University of Tokyo), Toshiya OKURO(The University of Tokyo), Yasunori KUROSAKI(Tottori University)

乾燥地における効果的な飛砂抑制には、空間的に不均質な植生被覆下での飛砂発生メカニズムの解明が不可欠である。特に放牧による植生退行が進行する地域では、灌木の空間分布が風食リスクに与える影響を正確に把握することが求められる。我々の先行研究では、空間的不均質性を考慮した新規植生指標として、Okinのモデルに基づくHeight Area Effect(HAE)とTotal Height(TH)が、従来の植生指標よりも飛砂をよりよく説明することを明らかにした。しかし、これらの知見は手動計測に基づく特定の植物群落条件下での検証に留まっていた。そこで本研究では、対照的な植物群落を有する環境下で、無人航空機(UAV)由来のデジタル樹冠モデル(DCM)を用い、これら指標の広域的な適用性と限界を評価した。
現地調査はモンゴル国マンダルゴビにおいて、対照的な2地点(礫質台地上のCaragana microphylla群落:WN、砂質窪地のKalidium gracile群落:S)で実施した。UAV写真測量により高解像度DCMを作成し、同時に飛砂観測と気象観測を実施した。摩擦速度で正規化した飛砂フラックスと各種指標(植被率、灌木高、Canopy gap、HAE、TH)の関係を対数線形混合モデルで分析した。
WNサイトでは、移動可能粒子が灌木風下側に集中し、灌木間の裸地は礫で覆われていた。その結果、灌木周辺が実質的な飛砂源として機能し、多くの指標が飛砂フラックスと正の相関を示すという直感に反する結果が得られた。唯一、Canopy gapのみが、大きな間隙が輸送を促進するという理論的予測と一致する関係を示した。一方、Sサイトでは強固な物理クラストにより土砂粒子の供給が制限され、植生構造に関わらず有意な関係は認められなかった。
本研究の結果、特に小規模な飛砂イベントにおいては、植生構造のみでは風食リスクの予測が不十分であることが示された。正確なリスク評価には、UAV由来の植生指標に加え、移動可能粒子の空間分布特性を統合した評価手法の確立が必要である。


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