| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-262  (Poster presentation)

森林の林床被覆率を規定する要因:ニホンジカ(Cervus nippon)の影響に着目して
An Analysis of the Determinants of Forest Understory Cover: With Special Reference to the Influence of Cervus nippon (Sika Deer)

*大橋春香(森林総合研究所), 深澤圭太(国立環境研究所), 山田祐亮(森林総合研究所), 山浦悠一(森林総合研究所)
*Haruka OHASHI(FFPRI), Keita FUKASAWA(NIES), Yusuke YAMADA(FFPRI), Yuichi YAMAURA(FFPRI)

近年,ニホンジカ(以下,シカ)の高密度化に伴い,森林生態系への影響が全国各地で顕在化し,深刻な問題となっている。シカの高密度化によって下層植生が衰退・消失すると,リターの捕捉や土壌侵食の緩和など,森林生態系の機能にも重要な影響が及ぶことが知られている。しかし,これらの関係について,広域的なスケールでの影響を定量的に評価した研究は限られている。本研究では,環境省が2014年に本州以南で実施した糞塊密度法の調査データを用い,季節,緯度,標高に伴う気温差による糞塊の分解速度の違いを補正することで,2014年時点におけるシカの生息密度を推定した。さらに,この推定値を森林生態系多様性基礎調査(第3期:2009~2013年)の下層植生データ(低木層植被率,草本層植被率,林床被覆率)および地形・林分構造データと統合し,人工林および天然林についてそれぞれrandom forestモデルを構築した。変数重要度を比較した結果,低木層および草本層の植被率に関しては,シカの生息密度は最大積雪深に次いで重要であった。一方,林床被覆率については,TWI,集水域面積,傾斜などの地形パラメータの重要度が相対的に高かった。本研究は,広域スケールにおいてシカ密度が下層植生の状態を規定する主要因の一つであることを示すとともに,気候や地形条件を考慮した統合的評価の重要性を明らかにした。


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