| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-267 (Poster presentation)
フタバガキ科樹木は、東南アジア低地の老齢林の地上部バイオマスの約半分を占め、各種生態系サービスの供給に重要な役割を果たす。一方、国際的な木材需要の高まりにより、木材としての価値の高いフタバガキ科樹木が選択的に伐採され、天然林における林冠木の個体密度低下が懸念されている。フタバガキ科の果実は昆虫や中・大型哺乳動物による強い食害圧を受けるため、親木の減少により景観スケールで十分な果実を生産できなくなると、更新に寄与する健全な種子の供給が不足し、次世代の更新の停滞と将来的な生態系機能の損失を招く可能性がある。そのため、フタバガキ林冠木の個体密度を維持しながら森林を管理することが重要であるが、これまで広域的にその空間分布を評価する手法は確立されていなかった。
本研究では、無人航空機(UAV)で取得した空撮画像を用い、フタバガキ科の樹冠を識別する深層学習モデルを開発した。マレーシア・サバ州の木材生産林において、計700 haの空撮を実施し、林冠のオルソモザイク画像を合成した。得られた画像にて樹冠分割を実施し、樹冠セグメントをフタバガキ科、3つのパイオニア種(Macaranga gigantea, M. pearsonii, Neolamarckia cadamba)、その他、の5クラスに分類するモデルを構築した。モデルの全体精度とフタバガキ科のF1スコアはいずれも75%程度であった。地上調査区(n = 38、各0.125 ha)におけるフタバガキ科の胸高断面積合計は、本モデルで推定した同科の樹冠面積合計と正の相関を示した。また、地上部バイオマス量が同程度であっても、過去に強い伐採を受けた森林では、フタバガキ科の樹冠面積合計および胸高断面積合計の双方が低い傾向がみられた。本研究で開発したフタバガキ科識別モデルは、地上調査区のデータと高い整合性を保ちながら、フタバガキ科の空間分布を広域で定量的に評価できる可能性を提示した。