| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-269  (Poster presentation)

和泉葛城山ブナ林に迫る危機:温暖化過程での林床植生の長期変動とシカ侵入状況把握
Crisis facing the Mt. Izumi-Katsuragi beech forest: Long-term changes in forest floor vegetation under climate change and evaluation of deer invasion

*幸田良介(大阪環農水研・多様性), 石塚譲(大阪環農水研・多様性), 松井淳(奈良教育大学)
*Ryosuke KODA(RIEAFO, Biodiv), Yuzuru ISHIZUKA(RIEAFO, Biodiv), Kiyoshi MATSUI(Nara Univ. of Educ.)

全国的にも地域的にも貴重な自然環境である和泉葛城山ブナ林では、近年温暖化の影響と推察されるブナの衰退が著しい上に、シカの分布拡大が進行するなど、その存続が懸念されている。継続的な調査により気候変動がブナ林を構成する多様な植物種に及ぼす影響を把握するとともに、シカの侵入・定着状況を広域的に明らかにすることで、貴重なブナ林の保全策の立案につなげていく必要がある。そこで、過去の植生調査データを復元し、再調査を行うことで温暖化進行過程での植物種の変化を評価するとともに、カメラトラップによる広域モニタリングを行うことで、シカ侵入状況の把握を試みた。
植生調査では、1988年に2ヶ所、2013年に別の15ヶ所で実施された植生調査区(各400 m2)を復元し、再調査を実施した。調査手法は過去に実施された植物社会学的手法、すなわち調査区内の植生を高木層から草本層の4階層に区分し、階層ごとに出現種をリストアップするとともに、それぞれの優占度と群度を記録する方法を踏襲した。カメラトラップ調査では、ブナ林内に既設の12台の自動撮影カメラによる調査を継続するとともに、ブナ林から半径10 km圏内に10台のカメラを増設し、シカの撮影状況を調査した。
過去の植生調査データを利用した長期植生変動の解析の結果、高木層では大きな変化がみられなかったものの、亜高木層や低木層では1988年との比較で、草本層では2013年との比較でも植生が大きく変化している状況が明らかとなった。全体的に常緑広葉樹が増加しており、新たに確認されたシロダモやヤブニッケイが低木層に至るまで成長しているなど、常緑広葉樹林化が進行していく可能性が示唆された。カメラトラップ調査で新たに確認されたのはオスジカ1頭のみであったものの、引き続き警戒が必要であると考えられた。これらの結果を踏まえた保全策の検討と、継続的なモニタリング体制の構築が必要である。


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