| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-272 (Poster presentation)
気候変動による海水温上昇によって、沿岸域の藻場生態系では、温度による直接的な影響に加え、植食性動物の増加などによる磯焼けが発生している。多くの海藻が磯根資源や沿岸性魚類の生産へも関係していることからその影響も懸念される。このため、東日本において、気候シナリオ別に海藻分布の将来予測を行い、適応策についても検討した。海水温のモデルには、国立研究開発法人海洋研究開発機構が開発した日本近海域2km将来予測データ(FORP-JPN02 V4)より、MIROC5及びMRI-CGCM3を用いた。また、各モデルの不確実性があることからアンサンブリングを行った。FORP-JPN02の各モデルの数値は、Historicalデータから2001~2005年、RCP2.6からは2086~2100年、RCP8.5からは2041~2055年及び2086~2100年における平均値を用いた。また、実測値を用いてバイアス補正を行った。将来予測の結果、三陸沿岸において、マコンブの分布域がRCP2.6の2090年代、RCP8.5の2050年代には消失し、またキタムラサキウニの分布適域が北上し海藻への捕食圧が低下することで、アラメ場へ移行していくと予測された。しかし、RCP8.5の2100年の場合、アイゴの分布域拡大に伴い大規模な磯焼けが発生すると予測された。東日本の藻場生態系が大きく変わることが予測され、将来、漁獲対象の転換も必要な可能性がある。また、海藻は分散速度が遅いことから、寒海性から暖海性の種への置換が起こるまでの間、植食性魚類による磯焼けが発生する可能性が示唆された。一方、東北地方では暖流の影響により津軽海峡を通じて日本海側からも分散する可能性があることから、秋田県や青森の藻場の保全政策も重要と考えられる。将来、漁業者数が減少することから、持続可能な漁業のためにカーボンクレジットによる副次的な収入の確保や、海業やツーリズムの活用、漁業者の就業支援対策をはじめ、都市部から移住を促進する政策も重要であると考えられる。