| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-273  (Poster presentation)

白山における雪田植生回復のためのササ刈り ササ丈別の初期植生の違いと1年目の変化
Sasa Cutting for Snow Patch Vegetation Recovery in Mt. Hakusan: Initial Vegetation Differences by Sasa Height and First-Year Changes

*岩本華奈, 近藤崇(白山自然保護センター)
*Kana IWAMOTO, Takasji KONDO(HNCC)

 近年、北海道大雪山や群馬県と新潟県の境にある平ヶ岳、富山県立山室堂平などの高山帯では、気候変動などに伴う土壌の乾燥化と、乾燥の指標植物と言われているササ類の生育範囲の拡大が報告されており、ササが発達すると、高山帯の種多様性は低下することが指摘されている。白山は分布の西限となっている高山帯の動植物が多く、生物多様性保全上も重要な地域である。しかし、近年、弥陀ヶ原(標高約2300m)や南竜ヶ馬場(標高約2100m)の雪田草原でササの生育範囲が拡大している。ササの拡大地域において植生を回復させる先行研究として、北海道大雪山でササの刈り取りを行った結果、雪田植生が回復したという事例が報告されている。そこで、本研究では、白山弥陀ヶ原でササが拡大した箇所において、ササの刈り取りを行い、ササの発達度合や雪田植物がどの程度残存しているかの違いによって、刈り取り後のササの再生や雪田植物の回復状況に差が生じるのかを調査した。調査区は、ササの発達度合の異なる3箇所に設け、各調査区で2地点、刈り取りを2 m×2 mの範囲で2024年9月に実施した。調査項目は、調査区の種ごとの植被率、ササの高さ・稈密度を、2024年9月、2025年7月、9月に記録した。
 ササの刈り取り1年後、ササの高さや稈密度、被度は減少していたが、ササの発達度合の差によるササの再生に差は見られなかった。刈り取りを行った調査区のうち、ササが発達し、下層植生がほとんど存在していなかった調査区では7月末に雪田植物の芽生えが数種見られた。また、ササの発達度合が低かった箇所では、刈り取り前にササに被圧されていた雪田植物の被度が増加傾向で、地下で休眠していたクロユリやネバリノギラン等が芽を出し、開花した種もあった。下層植生が失われた箇所ではササの刈り取りにより雪田植生が回復する可能性があることやササの発達段階初期の刈り取りでより雪田植生が回復しやすいことが分かった。


日本生態学会