| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-275 (Poster presentation)
生物多様性観測の必要性の高まりを受けて、録音機器を用いた野外環境での生態音響観測が発展・普及しつつある。生態音響観測では、サウンドスケープ(音景)と呼ばれる環境音の状態を通した生物多様性の状態評価が試みられている。具体的に環境音から音景を数値化する音景指数も提案されており、その代表的として、野生生物由来の音と人間活動由来の音の比から計算される正規化音景指数(NDSI)が挙げられる。NDSIは生物種の多様度指数と相関がみられることも度々示されているが、その多くは鳥類に着目したものである。また、NDSIでは「生物由来の音」は可聴域(20kHz以下)内の音域から計算されており、生物由来の超音波には対応していない。我が国においては文化的な風物詩である昆虫類の鳴き声も生物多様性や季節の移り変わりの重要な指標であると考えられるが、昆虫類にはキリギリス類の一部など身近な種でも超音波域に達する音を発するものも存在する。それらを含めた生物多様性の状態は従来のNDSIでは十分に評価できない可能性がある。
発表者らは福島県内及び茨城県つくば市の国立環境研究所構内に設置した音響観測機器によって、2025年夏~秋の間にサンプルレート256kHzで録音を行い、可聴域を超える範囲の周波数の情報も含む環境音情報を得た。本発表ではそれらの音からNDSIを算出すると共に、試行的にNDSIにおいて「生物由来の音」として設定する周波数域(従来は2000~11000Hzが用いられる)をより高い周波数域に変更することで得られる拡張版NDSIも算出し、より適切なサウンドスケープの評価が可能となるかを検討する。人に聞こえない超音波域を含む情報の重要性が示された場合、機械観測由来の情報と人による調査に基づく情報をどのように使い分けながら生物多様性を評価していくかに関して有用な示唆を得ることが期待できる。