| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-276 (Poster presentation)
環境問題への理解と行動を社会に広げるためには、特定の関心層に限られない生態学教育の機会が重要である。動物園は多様な属性の来園者が訪れるため、生態学的内容を社会に普及する教育の場として機能しうる。一方で、各動物園における展示内容や立地条件といった特性や来園者構成の違いが、学習効果にどのような影響を及ぼすのかについては、十分に検討されていない。本研究では、多様な来園者が自由に参加可能な教育手法として、Webアプリを用いた環境学習イベント(自然に関するクイズラリー)を実施した。パッケージ化したWebアプリを用いることで同様の内容を複数の動物園で実施でき、多くの利用者データの収集や施設間比較が可能となる。今回は2つの動物園(A・B)を対象に、同行者属性および施設特性が、来園者の生態学的内容への注目・関心および行動にどのように反映されるかを、イベント参加者へのアンケートに基づいて検討した。
イベントには多様な属性の来園者が参加しており、親子での来園者の方が、大人同士の来園者と比べて、展示情報への注目に関する指標で行動変化がみられる割合が高かった。また、動物園Aでは、生態学的内容に関する展示情報への注目・関心に関わる指標において、動物園Bより行動変化がみられる割合が高かった。これらのことから、親子(家族)来園という同行形態が、世代間での学習機会として機能している可能性が考えられるとともに、動物園の特性によって、学習効果が一律ではないことが示唆された。動物園Aでは気候変動教育や動物の生態に関する展示が充実しており、こうした展示構成が、生態学的内容への注目や関心の表出に影響した可能性がある。以上より、動物園は多様な来園者に生態学教育を届けうる場である一方、その効果は一律ではなく、施設特性や来園者構成を踏まえた教育内容・手法の最適化が求められることが示された。