| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-003  (Poster presentation)

スズキ(Lateolabrax japonicus)の捕食行動に右利き・左利きは存在するのか【A】
Lateralized Feeding Behavior in the Japanese Seabass (Lateolabrax japonicus)【A】

*森川貴弘, 児島碧斗, 今井怜美(飾磨高等学校生物部)
*Takahiro MORIKAWA, Aoto KOJIMA, Remi IMAI(Shikama HS Biology Club)

 スズキ Lateolabrax japonicus は日本の沿岸域に生息する魚食魚である。近年,魚類において形態や行動の左右差(左右性・利き)が報告されているが,海水生魚食魚での報告は少なく,スズキでは未解明である。脊椎動物の基盤となる魚類の左右性や利きの獲得プロセスを明らかにすることができれば,ヒトをはじめとする哺乳類の左右非対称性の謎の解明に繋がると考える。そこで本研究は,スズキの左右性および利きの有無を検証した。
 野外で全長8〜90cmのスズキ115個体を採集した結果,100個体で下顎の左右いずれかへのずれが確認され,左ずれが有意に多いことが明らかとなった。全長60cm以上で左ずれが顕著であり,小型個体では有意差はみられなかった。次に,水槽内での捕食行動をハイスピードカメラにより解析した。全長40〜70cmの個体では,下顎のずれ方向へ反転する回数が有意に多く、その際の捕食成功率も有意に高かった。一方,全長17〜21cmの若魚では反転方向および捕食成功率に有意な左右差は認められなかった。全長35cmと39cmの2個体では,反転回数に左右差はなかったが,下顎のずれ方向に反転した際の捕食成功率は高い傾向を示した。全長と下顎のずれ方向への捕食成功率には強い正の相関(r=0.842)が認められ,成長に伴い利きが強化されることが示唆された。さらに解剖により形態的要因を検討したところ,体側筋の厚さに左右差は見られなかったが,視神経は下顎のずれ方向側で有意に太かった。また,歯骨,口蓋骨,前鰓蓋骨など捕食に関与する骨に非対称性が確認された。
 以上より,スズキは全長約20cmで下顎の左右性を,約40cmで機能的な利きを段階的に獲得し,成長に伴う餌生物の変化に適応して捕食成功率を高めている可能性が示唆された。


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