| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-004 (Poster presentation)
シマヒレヨシノボリRhinogobius tyoniは瀬戸内海を中心とした河川下流域や池沼など止水域に分布する(細谷、2025)。石川には本種のほか,近縁種のカワヨシノボリが生息する(大阪府、2010)。ヨシノボリ属の2種は繁殖生態などがよく似ると推察されるが、体や卵のサイズなど、大きく異なる特徴(石田ほか、2005)に着目して研究を進めた。
石川の3か所と流域のため池において,タモ網で本種を採集し,生息状況を調査した。採集した石川中流域の2種とため池のシマヒレヨシノボリの胃の内容物を調べた。稚魚の共食いを観察したことから,ため池でよく見かけた稚魚の浮上は,共食いから逃れるための行動ではないかと仮説を立て、水槽で実証実験を行った。
本種の生息密度は、ため池が非常に高く、石川では中流域の1地点のみで生息を確認し、密度は低かった。その地点ではカワヨシノボリが優占した。河川のシマヒレヨシノボリは植物を選択的に捕食し、動物を忌避する傾向が見られたが、河川のカワヨシノボリとため池のシマヒレヨシノボリは動物を選択的に捕食し、植物を忌避するという大きく異なる結果が得られた。稚魚の浮上と共食いの関係を見る水槽実験では、下層個体を取り除き、浮上個体の行動を観察したところ、浮上個体が全て下層へと移動した。単独の場合、浮上行動は確認できなかったが、大きさの異なる個体で実験を行うと小型個体のみが浮上した。
本種の主な生息環境は,石川のような河川ではなく,ため池のような止水域であると考えられる。ため池のシマヒレヨシノボリの食性から本種は肉食の強い雑食性であると考えた。河川では優占種のカワヨシノボリが動物を選択的に捕食することが影響してシマヒレヨシノボリは植物を選択的に捕食する可能性が示唆された。よく見かけた稚魚の浮上は、共食いから逃れるための行動であり、種間が影響し合うことで生じる可能性も考えられた。