| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-006 (Poster presentation)
多くのサメは上葉が下葉より大きく発達した異尾を持つ。一方で、多くの種が絶滅危惧に瀕するネズミザメ科に属するサメは三日月型尾鰭を有する。また、奇網という特殊な血管構造により体温を高く保つことができるなど、サメの中でも特異な存在である。しかし、三日月型尾鰭の役割については不明瞭な点が多く、高速遊泳との関連性を示した報告が僅かにあるのみである。本研究では、複数種のサメの尾鰭に関する計測から成長に伴う三日月型尾鰭への発達を解明することを目的とした。また、尾鰭の模型を用いた実験により、水中における尾鰭の機能を評価し、遊泳において大きな役割を果たす胸鰭も同時に計測することで、三日月型尾鰭の役割を多角的に検証した。
結果より、ネズミザメ科においては、アオザメが成長に伴って完全な三日月型尾鰭を獲得すること、ネズミザメは幼魚も三日月型尾鰭をもつことが明らかになった。一方で、メジロザメ科では、ヨシキリザメがメジロザメ属より三日月型に近い尾鰭を持つことが分かった。先行研究との比較によって、三日月型尾鰭を持つサメは深く潜水する傾向にあることが示唆された。模型の実験では、異尾が水を斜め下に押し出すのに対して、三日月型尾鰭は比較的真後ろに押し出す傾向を示した。下向きの水流は潜水の抵抗となるため、三日月型尾鰭は異尾よりも潜水に適した形質であることが示唆された。また、アオザメの胸鰭は、成長に伴って揚力が大きく高速遊泳に適した形状になることも判明した。
以上より、三日月型尾鰭は潜水に適しており、特にアオザメでは成長に伴う発達が潜水深度とも関連していることが明らかになった。従来の研究では、三日月型尾鰭と高速遊泳のみに限定して議論されてきたが、本研究の結果、ネズミザメ科特有の奇網による高速遊泳と潜水能力の双方が、同科特有の三日月型尾鰭の形態的発達を促したとする、新しい仮説の提唱につながったと考えている。