| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-010 (Poster presentation)
【背景・目的】
両生類における長期記憶に関する研究は報告例が少なく、特に有尾目のサンショウウオ科については未解明な点が多い。そこで本研究では、絶滅危惧II類に指定されているオオイタサンショウウオ(Hynobius dunni)を対象とし、視覚刺激を用いた同時弁別学習を通して、本種が長期記憶力を有しているかを検証することを目的とした。
【被験体・実験方法】
被験体には、上陸済みの幼体8個体を用い、着水を報酬とした左右のアームに白色および黒色の画用紙を貼付したT迷路課題を設定した。黒アームが正反応である場合を「暗条件」、白アームが正反応である場合を「明条件」と定義した。また、学習期間を設け、「4日連続で正答率75%以上」を学習基準とし、基準到達後に強化刺激を与えずに4日間のプローブテストを実施した。
【結果・考察】
本研究では、実験I~IIIの全てにおいてプローブテストで学習基準を上回る正答率が得られ、オオサンショウウオが長期記憶を形成することが示された。
実験Iでは、明条件下において学習期間とテスト期間の間に有意差が認められた。一方、暗条件下では両期間の成績に差はみられず、低明度環境を好む習性が記憶力に影響した可能性が考えられた。この傾向は検証実験においても同様に観察された。
そこで実験IIでは、暗条件に割り当てられていた被験体を明条件に変更して再検証を行ったが、両期間の間に明確な差はみられなかった。しかし、頭胴長の長い個体ほど平均正答率および同時弁別反応を示した平均確率が高く、平均試行時間も短い傾向が一貫して認められ、身体的成長と学習成績の関連が示された。
この傾向は実験IIIにおいて、明条件下で別の被験体を用いた場合にも確認された。
【結論】
オオイタサンショウウオは長期記憶の形成が示唆された。また、頭胴長が長いほど長期記憶力が高いことが認められた。