| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-013 (Poster presentation)
【背景・目的】
オオイタサンショウウオ(本種)は絶滅危惧種Ⅱ類に指定され保全が急務となっている。本種では、水温や飼育密度などの環境要因が形態的特徴を変化させることが分かっているものの、幼生の形態的特徴の変化を長期的かつ詳細に観察した研究例がなく、本種幼生の形態的特徴やそれに対する環境要因の影響過程は不明である。そこで本研究では、異なる条件下で孵化直後の本種幼生を外鰓消失まで単独で飼育することで、本種幼生の形態的変化や環境の違いが形態的特性に与える影響を明らかにすることを目的とする。
【材料・方法】
直径約9cmの容器において、3月下旬に孵化した大分県由来の本種幼生8個体を外鰓が消失するまで単独で飼育した。8個体のうち4個体は一定量の餌を、残りの4個体は一定量の2倍量の餌を毎日与え、全長、頭胴長、頭長、頭幅、眼上頭幅、各部位の発達度合い等を測定した。一部の幼生が死亡したため、解析には一定量の餌を与えた4個体と一定量の2倍量の餌を与えた2個体を用いた。
【結果・考察】
一定量の餌を与えた4個体の体サイズ(全長・頭胴長)の3日平均は、成長速度から少なくとも3つの期間に分けられ、最初と最後の期間では成長速度が速く、それ以外では成長速度が遅くなっていた。また、成長速度が遅くなる期間は後足が発達する時期とほぼ一致していた。一方、一定量の2倍量の餌を与えた2個体の体サイズの3日平均は、後足が発達する期間においても伸長する傾向がみられた。一定量の2倍量の餌を与えた個体の外鰓消失までにかかる日数(70~77日)は、一定量の餌を与えた個体(94~111日)と比べて短かったが、餌量の違いにより外鰓消失時の体サイズに差はなかったことから、餌環境は、後足が発達する期間の成長速度を通して変態までの期間に影響することがはじめて示唆された。今後は、幼生の分布密度の考察も行いつつ、飼育個体を増加させ本結果の妥当性を検証する。