| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-021 (Poster presentation)
植物は神経系を持たないが環境変化に応答する。しかし、学習や判断といった高度な情報処理能力を持つかは不明である。これを解明すれば、学習が神経系非依存の機構でも実現可能かという根源的な疑問に答えられる。そこで本研究は、オジギソウが学習の一種である馴化を持つかを検証した。馴化とは、繰り返しの刺激に対して応答を減衰させる現象であり、その検証には、提示する刺激の精密制御と客観的な応答評価が不可欠である。そこでまず、速度や方向を制御して特定の刺激を反復提示できる刺激装置を開発した。さらに、深層学習(YOLOv9とConvNeXt)を用いて葉開閉度を客観的に評価する方法を開発した。これら2つの技術を組み合わせることで、刺激を与え応答を確認する実験を行った。その結果、刺激速度の上昇に伴い葉の閉鎖応答が有意に増大し、刺激強度と応答強度に正の相関が確認された。また、同一方向からの反復刺激に対し応答が減衰した後、異なる方向の新奇刺激を提示すると強く応答した。この刺激特異性は、応答減衰が単なる疲労ではないことを示している。加えて、刺激休止時間が長いほど、休止後の応答が回復する傾向が認められた。これらの結果から、神経系を持たないオジギソウが、刺激方向という質的情報を識別し、応答を調節する高度な情報処理能力を持つことが示された。特に、同一刺激への応答減衰、新奇刺激への応答維持、休止による応答回復という結果は、馴化の特徴である「応答減衰」「刺激特異性」「自発的回復」と一致し、植物に馴化という基本的な学習能力が存在することを示唆している。本研究で確立した実験系は、今後、植物の学習能力や記憶の生理的メカニズムのさらなる解明に貢献できる。さらに、植物が持つ情報処理能力を解明し活用することで、環境ストレスを学習させ、耐性を高めた作物の開発など、持続可能な農業技術へ応用できる可能性がある。