| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-025 (Poster presentation)
六甲山系は崩れやすい風化花崗岩土壌が広く分布し、豪雨による表面侵食や斜面崩壊が頻発している。近年防災対策として植生機能が注目されるが、樹種特性が表面侵食に及ぼす影響は十分に解明されていない。そこで本研究は、神戸大学附属中等教育学校内の斜面の一部(総面積507.5㎡、傾斜36°)を対象に、優占種の把握及び地上部形質が表面侵食リスクに及ぼす影響の定量的な評価を目的とした。
対象斜面内の樹木150本(胸高直径3.0cm以上かつ樹高1.3m以上)に対し毎木調査を実施した。その結果、本数及び胸高直径のデータを基に優占種はクスノキとウバメガシだと判明した。表面侵食リスクの評価では、枝下高が高いほど落下雨滴の運動エネルギーが増大し、土壌侵食を促進させ、枝の広がりが大きいほど雨滴の遮断効果が高まり、土壌侵食を抑制するというRickson & Morgan (1988)の知見に基づき、枝下高と枝の広がりを指標とした。特に、近接するマンションからの眺望確保のために一律に断幹された背景を踏まえ、この管理が樹形と侵食リスクに与える影響について優占種である二種についてt検定を行った。分析の結果、全樹木における枝の広がりと枝下高の平均(枝の広がり:4.56m、枝下高:5.21m)とを比較して、クスノキは平均枝下高が6.8mで、雨滴が加速して直接地表面を打撃するリスクが相対的に高い構造であり、対してウバメガシは平均枝下高が4.5mで、地表付近で雨滴を遮断する機能が相対的に高いことが示唆された。特に断幹されたウバメガシは、非断幹個体と比較して有意に枝下高が低く(p<0.05)、適切な管理が林内環境を変化させ侵食リスク低減に寄与すると裏付けられた。なお、クスノキは枝の広がりと枝下高ともに、またウバメガシは枝の広がりに、断幹の有無による有意差がなかった。
以上より、六甲山系の樹木管理においては高木層だけでなく、ウバメガシのような低木層を維持し、林床保護の観点からも適切な断幹の実施が表面侵食の抑制に有効であると考えられる。