| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-029  (Poster presentation)

ハエトリグサ(Dionaea muscipula)の捕虫葉の開閉を人工的に調整する方法について
Methods for Artificially Controlling the Opening and Closing of Dionaea muscipula Traps

*三好真生(嵯峨野高等学校), 野村昂太朗(嵯峨野高等学校), 山本悠仁(嵯峨野高等学校), 綾部由希子(嵯峨野高等学校), 大川原史也(嵯峨野高等学校), 稲田圭(京都大学大学院)
*Mao MIYOSHI(Sagano High School), Kotaro NOMURA(Sagano High School), Haruhito YAMAMOTO(Sagano High School), Yukiko AYABE(Sagano High School), Fumiya OKAWARA(Sagano High School), Kei INADA(Kyoto Univ.)

 ハエトリグサ(Dionaea muscipula)は捕虫葉によって昆虫を捕獲・消化し養分を得ることができる。捕虫葉は一度閉じると、消化を行わない場合でも約2日間閉じた状態を保つ。捕虫葉の開閉を人工的に調整できれば、捕虫葉の研究をより効率的に進められると考えた。
 先行研究より、感覚毛への刺激によって細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇し、それに伴う細胞外浸透圧の変化が捕虫葉の開閉に関与していることが示されている。本研究では、外部から滴下する溶液の濃度を操作して浸透圧を変化させることで、葉が開くまでの時間を調整できるという仮説を立てた。
 実験1では、捕虫葉の細胞の状態を調べるため、開いた葉と閉じた葉の切片を作成し観察して比較した。閉じた方では原形質分離が確認された。閉じた状態では細胞外の浸透圧が高いことが分かった。一方、開いた葉は切り取る際に感覚毛が刺激され閉じてしまい、観察ができなかった。
 実験2では、外部からの浸透圧の調整が開く時間に与える影響を考察するために、閉じた捕虫葉を切り取り、低張液(純水)および高張液(塩分濃度3%の人工海水)に浸し、それぞれの開くまでの時間を比較観察した。どちらにおいても葉は開かなかった。これは溶液が細胞内部まで十分に浸透しなかった可能性や、塩分が植物の機能に悪影響を与えた可能性が考えられる。
 実験3では、方法を改良し捕虫葉を切除せず縁に切れ込みを入れ、そこへ低張液(純水)または高張液(36%ショ糖水)を滴下した。その結果、低張液、無処理、高張液の順に葉が早く開き、平均の時間はそれぞれ約19時間、約24時間、約39時間であった。低張液処理で葉が早く開いたことは、細胞への吸水による膨圧増加が葉が開くのを促進したためだと考えられる。以上より、捕虫葉内部の浸透圧を調整することで、葉が閉じてから開くまでの時間を人工的に制御できる可能性が示された。


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