| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-034  (Poster presentation)

山形県におけるツチスガリ属の生息確認と生息環境について【A】
Confirmation of the presence and habitat environment of the genus Cerceris in Yamagata prefecture【A】

*Hananosuke KOKUBUN(NihonUniv. Yamagata Sr. H.S.), Yumena Kojo NAKAMURA(Yamagata Dormouse Res. Group), Nobuaki KOJO(Yamagata Dormouse Res. Group)

 ツチスガリ属は膜翅目ギングチバチ科に分類され、地面に掘った巣に捕らえた昆虫類を餌として運び込み、その巣穴内に卵を産むことで繁殖する狩りバチの一種である。ツチスガリ属は獲物に対して特異性があることが分かっているが、分布や行動などの詳しい生態は明らかになっていない。山形県では43年間発見報告がなかったが、著者は2024年7月に山形県大蔵村でツチスガリ属2種(ナミツチスガリ・マルモンツチスガリ)の成虫と巣穴、及びナミツチスガリの巣から幼虫と幼虫に捕食されたコハナバチを発見することができた。
 そこで、本研究では本種の生息状況と生息環境を明らかにするために、本種が確認された地点と一度も確認されなかった地点にコドラートを設置し、2025年5月から10月の期間に月2回程度調査を行った。調査はコドラート内外において、巣穴の出現、植生、成虫の行動、餌資源について実施した。
 巣穴調査の結果、ツチスガリ2種の巣は6月から7月の期間に背の高い草本や地表を覆う蘚苔類が少なく、地表面が露出した箇所で確認されたものの、ロジスティック回帰分析の結果では、コドラート内の巣穴の有無と植物被度の間に有意な値は示されなかった。さらに、ツチスガリ2種の巣の近くには餌となるコハナバチの営巣も確認された。行動観察では、ナミツチスガリの成虫はノリウツギの花を吸蜜しており、幼虫の餌としてコハナバチの成虫を巣に運搬していた。
 これらの結果から、有意ではないもののツチスガリ2種は地表が露出しており、成虫や幼虫の餌資源が近くにある地点に営巣している可能性が示唆された。またニッチの重複した2種が同所的に生息していることからコハナバチ以外にも餌資源となる生物がいる可能性が考えられる。今後、これらをより詳細に調べることで、本種の保全に向けた生態学的知見を集積できるものと考えられる。


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