| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-037  (Poster presentation)

クロオオアリの食性と塩分の関係性について【A】
Relationship Between Feeding Habits of  Giant Black Ants and Salt Content【A】

*小島大洋(YSFH)
*Taiyo KOJIMA(YSFH)

 本研究では、同一種のアリであっても生息環境の違いによって食性、特に塩分嗜好性が変化する可能性について検証した。対象種にはクロオオアリを用いた。先行研究において、同属種であるCamponotus mirabilisは、海岸から離れた地域ではナトリウムが不足するため、餌から積極的に塩分を摂取することが報告されている。そこで本研究では、日本のクロオオアリにおいても同様の傾向が見られるかを検討した。
 実験は2段階で行った。実験1では、内陸部(川崎市内の草地)および沿岸部(横須賀市・東京湾沿岸)で採取した個体をそれぞれ6匹ずつシャーレに入れ、塩化ナトリウム水溶液と、塩化ナトリウム水溶液に粉糖を加えた溶液を提示し、摂取傾向の差を比較した。実験2では、共通条件下での傾向をより詳細に検討するため、鶴見川の上流から河口までの5地点で各3コロニーから5匹ずつ(計15匹)を採取し、同様の方法で嗜好性を比較した。
 両実験の結果に対してt検定を行ったところ、いずれもp値が0.05未満となり、有意差が認められた。これらの結果から、生息環境の違いが塩分摂取行動に影響を与えている可能性が示唆された。
 一方で、本研究には、行動の詳細な動画記録ができなかったこと、塩分濃度を段階的に設定できなかったこと、気温や湿度といった環境条件を統制できなかったことなどの課題が残された。今後はこれらの条件を精密に制御した追加実験を行い、結果の再現性および精度を高めたい。また、他種との比較研究を通して、生息環境に起因するナトリウム制限がアリ類の栄養選択行動を規定する要因であるかを検証し、環境適応戦略の理解につなげたい。


日本生態学会