| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-038 (Poster presentation)
近年、生物保全を都市公園でも行うことが重要視されている。都市公園でアリの観察を行っていると、樹の周りの方が他の場所より巣を作っていることが多いという傾向が観察された。そこで本研究では樹近くの方が、樹から離れている地点よりアリの巣が多く作られているという仮説を立て、その調査を行なった。
本研究では2025年5月から2025年11月の期間に東京都新宿区に位置する都立公園と区立公園、合計107ヶ所で行った。各公園にクロヤマアリの巣の数と樹からの距離を記録した。なお、アリの種類は日本全国に広く分布しており、普通種であるクロヤマアリを対象に行った。その結果、クロヤマアリの巣がある公園は20ヶ所であった。
樹と巣の距離を調べた結果、巣の約76.9%が樹から0〜250㎝の間に巣を作っていた。これは、人による踏まれやすさによってこの傾向が生まれているのではないかという仮説を立てて、土壌硬度の測定をした。巣の中心から放射状に10㎝離れた8箇所と、巣の中心から2m離れた地点8箇所の土壌硬度を、山中式土壌硬度計を用いて調べた。その結果、巣の周りの支持力強度の平均が8.505 kg/㎠、巣から2mの地点の支持力強度の平均が21.90 kg/㎠となり、巣の周りの土壌が柔らかいことがわかった。踏圧の影響があまりなく、土壌が柔らかい場所に巣を作っている可能性が考えられた。
公園別でのクロヤマアリの巣の数に注目すると、一番多かったのは新宿御苑の55個であり、次に戸山公園で8個、西落合公園で4個であった。この原因について公園の面積が関係していると考え、巣の個数を公園の面積で割ったところ、アリの巣一個あたりの面積の平均が2504.9㎡となった。だが、巣の周辺環境や行動範囲によって変わる可能性があるので、萩本ら(1992)の数値をもとにクロヤマアリの行動範囲を12mとし、巣の中心から12m範囲内の樹の密度と巣が無い公園の樹の密度を比較し、樹の密度とクロヤマアリの巣の数の関係についても発表する予定である。