| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-043 (Poster presentation)
虫は付着した異物を取り除くためだけに自分の体を舐める行動(グルーミング)をすると思っていたため、ヒメギス(キリギリス科)が移動先の虫かご内でグルーミングを始めたので驚いた。そこで、グルーミングの目的を明らかにするために研究を始めた。匂いによる哺乳類の縄張り宣言から連想し、ヒメギスのグルーミングも縄張り行動だと考えた。まず「グルーミングは縄張り行動」という仮説を立て、「他の虫かごに移動すると、そこを自分の縄張りに変えるためにグルーミングが多い」「自分の虫かごに移動すると、自分の虫かごは縄張りに変える必要がないのでグルーミングは少ない」と予想した。自分の虫かごから出て戻った後と普段のグルーミング時間との間には大きな差が出なかったことから、グルーミングは移動によって起こる行動ではないと思われた。また、他の虫かごに移動した後の方がグルーミングが多いという予想通りの結果が出たため、グルーミングは縄張り行動だと思われた。だが、巣のない虫に縄張りがあるのか疑問に思った。そこで「ヒメギスには縄張りがある」という仮説を立て、縄張りがあるならば「同性の縄張りを避ける」「異性と自分の縄張りに同程度向かう」と予想した。匂いの選択実験の結果、雌雄ともに同性よりも自分の匂いを選び、自分の匂いと異性の匂いを選んだ回数に大きな差はなかった。予想通りの結果が出たことで縄張りがあると思われた。結果で見られた性差は、雄だけが鳴くことが原因だと考え「雄は鳴くことも縄張り行動」という仮説を立てた。雄を対面させると、鋭く短い音で鳴き、仮説通り縄張りを主張しているようだった。今年は排泄物の匂いが実験結果に影響していないことを証明するために「排泄物は縄張りと無関係」と仮説を立てた。その結果、縄張り主張に排泄物が関係しないことが証明され、グルーミングでつけられた匂いが行動変化の要因となった可能性を高めることができた。