| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-046 (Poster presentation)
チョウの翅の色模様は多様であり、性的シグナルや擬態などの生態学的に重要な機能を有している。チョウの翅の色模様は、眼状紋をはじめとした「色模様要素」とそれ以外の「背景領域」との組み合わせによって成り立っており、色素を有する鱗粉がモザイク状に配置されることによって表現されている。近年、色模様要素については研究が進んできているが、背景色の表現方法の種特異性や一般性については詳細な検討が行われていない。そこで本研究では、背景色の表現方法に焦点を当てることを目的とし、翅の基部から辺縁に向かう黄色-白色のグラデーションを背景色として有するマダラチョウ亜科のオオゴマダラを研究対象とした。翅の顕微鏡観察の結果、基部の鱗粉は白色で細く、翅膜が見える状態となっており、鱗粉ではなく翅膜とソケットが黄色に着色されていることがわかった。翅をメタノールに浸けておくと容易に脱色され、その抽出物は、代表的な黄色色素(タートラジン)と類似の吸光スペクトルを持つことがわかった。抽出物のLC-MS 解析により、この色素成分には、分子量370.29をもつプテロローディンが含まれている可能性が示唆された。併せて、マダラチョウ亜科の他種の翅についても顕微鏡観察を行ったところ、オオゴマダラと同様に翅膜とソケットの着色が確認された。また、オオゴマダラに対する擬態種(アゲハチョウ科、オオゴマダラタイマイ)を比較対象として顕微鏡観察を行った結果、擬態種の翅膜は着色されていなかった。このことから、擬態種は翅膜の着色方法までは模倣していないことがわかった。以上の結果から、オオゴマダラの背景黄色領域における着色は翅膜とソケットの色素沈着によるものであり、マダラチョウ亜科の他種の背景領域においても同様の方法が用いられていることが明らかとなった。チョウの翅の色模様表現には鱗粉だけでなく、翅膜とソケットを含めた多様な方法が用いられていることがわかった。