| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-047 (Poster presentation)
生物はその生息環境に適した様々な形態を持つ。本研究では、アゲハチョウ属(Papilio属)の幼虫の腹部に存在する腹脚と呼ばれる幼虫期にみられる脚様構造の形態とその生息環境の関連を調べた。Zakharovら(2004)によると、アゲハチョウ属では腹脚先端にあるCrochets呼ばれる構造に1列型と2列型があり、その違いは幼虫が主に利用する場所、つまり枝上ならば1列型、葉上ならば2列型という関係がみられることを明らかにしている。しかしながら、Zakharovらの研究は、Crochets列数を調べた種が特定の系統に偏っており、列数と生息場所との関係には検討の余地がある。そこで、私の研究では、調べられていないアゲハチョウ属系統4種(ナミアゲハ、シロオビアゲハ、クロアゲハ、モンキアゲハ)の幼虫の腹脚を走査型電子顕微鏡で観察し、腹脚先端のCrochets列数を比較した。
その結果、葉上を生息場所とするナミアゲハではZakharovらの説どおり2列型を示したが、クロアゲハ及びモンキアゲハでは2列型ではなく4列のCrochetsがみられた。さらに、シロオビアゲハは枝上にもかかわらず2列型を持ち、Zakharovらの仮説と一致しなかった。しかし、調べた4種を含め生息環境と列数の関係について全体を俯瞰すると、枝上の種はCrochets列数が少なく、葉上の種はCrochets列数が多い傾向が見られた。また、2列以上のCrochetsを持つ種が見つかったことで「Crochetsの列数の違いは生息場所の違いに由来するものである」という仮説に修正を加えるものである。
今後は、種数を増やして生息場所と列数の関係を調べることで、種間で列数がどのように変化してきたかを明らかにするとともに、Crochetsの列数が形成する発生過程を観察することで、列数の進化を明らかにすることが課題である。