| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-052 (Poster presentation)
ヒメタイコウチ(Nepa hoffmanni)は、カメムシ目タイコウチ科ヒメタイコウチ属の湿地性肉食水生昆虫。 奈良県では絶滅寸前種として指定されている(奈良県版レッドデータブック2016)。飛翔することができないため、生息域が広がらず、開発や植生の遷移、気候変動などで、生息地とともに個体数も減少傾向にある(桑名市 2010,中尾ら 2011)。したがって、野外で絶滅してしまうリスクに備え、生息域外での保全が必要である。
本校では、2022年からヒメタイコウチの飼育・繁殖に取り組んできた。今年度は成虫および幼虫の飼育観察を通して、「① 飼育環境:気温や湿度、日当たり等、どのような条件が適しているのか」「② エサ:成虫や幼虫の飼育に適したエサは何なのか、また容易に給餌できるエサは何なのか」の2点について重点的に調査を行った。孵化した幼虫を成虫まで飼育することや、ヒメタイコウチを繁殖させるにあたり、飼育に必要な条件や方法を発見し、新しい知見を得ることを本研究の目的とした。
まず、湿度や気温の条件として、乾燥させず、水面を保つ方が良い。4月から10月は、平均25℃から28℃の、温度変化があるのが好ましいことがわかった。飼育容器内に産卵された卵は、孵化するまで触らない方が孵化率が高かった。また、幼虫を集団飼育すると、共食いが発生してしまうので、個別で育てる方が良い。各齢に与えるエサとして、1齢から3齢幼虫にはボウフラや冷凍アカムシ(世界初の試みであった)を与え、4齢から5齢幼虫にはダンゴムシを与えるのが良いことが分かった。
今後は、「孵化した卵としなかった卵の違いは何なのか」「幼虫の脱皮が止まる原因は何なのか」といった新たに生じた疑問を探り、さらに深く追究することにより、ヒメタイコウチの飼育繁殖に貢献していきたい。