| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-053 (Poster presentation)
近年海洋プラスチック(以降プラ)が生物に与える影響が注目されているが、その発生源の一つである河川プラの影響を調べた研究は少ない。2024年~2025年に埼玉県の河川において行われた本校生物部の研究において、ヒゲナガカワトビケラの幼虫の巣にプラが含まれていることが発見された。本種は分布が広く、個体数も多いことから水質指標生物に指定されているほか、他生物の餌であるなど河川生態系において重要である。そのため、野外環境において幼虫の巣に含まれているプラの量や種類を明らかにする測定が行われた。朝霞市の黒目川流域の川底において、50 cm四方の区画をランダムに9 箇所設置し、各区画内の幼虫の巣に含まれるプラを採取した。それを実体顕微鏡によって観察し、大きさを測った。その結果、複数の巣から5 mm以上のプラが発見された。それを受けて、ヒゲナガカワトビケラの営巣におけるプラへの選好性を調べることを目的に飼育実験を行った。
飼育実験では、巣材として水槽に砂利とポリスチレン(以後 PS)を投入し、巣材の総量に対するPSの割合を10%、20%、50%、80%、100%となるように変化させた5条件を設定した。各条件で幼虫を一定期間飼育して営巣後に巣材を回収し、巣材に含まれるPS(以降巣材PS)の割合を測定した後、投入したPS (以降投入PS)の割合と比較した。
結果、投入PS の割合が 20 %を超えるまでは巣材PSの割合は投入PSの割合と概ね一致し、比例に近い関係を示した。一方、20 %を超えてからは投入PS の割合が増えても巣材PSはほぼ一定になった。他のトビケラ目の先行研究より、幼虫も巣材に高い選好性を持っていることが考えられた。巣材PSが増加しなくなったのは、幼虫の元の生息環境の巣材に高い選好性を持つ性質が働いた可能性がある。したがって、河川プラの著しい増加は幼虫の営巣に影響を与える可能性がある。