| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-066  (Poster presentation)

ムササビ(Petaurista leucogenys)の概日リズムの調節【A】
Regulation of the Circadian Rhythm in the Japanese Giant Flying Squirrel(Petaurista leucogenys)【A】

*藤原悠太, 渡邊心葉, 岡崎弘幸(中央大附属高校生物部)
*Yuta FUJIWARA, Kokoha WATANABE, Hiroyuki OKAZAKI(Chuo Univ high school)

  ムササビ(Petaurista leucogenys)は、滑空によって移動する樹上性の完全夜行性哺乳類であり、日本固有種である。本種は一般に日没約30分後に出巣し、日の出約30分前に帰巣するという一定の活動傾向を示す。本研究では、この年間を通じてみられる活動時刻の規則性が、どのような要因によって調整されているのかを明らかにすることを目的とした。
 まず、高尾山薬王院において野生個体の出巣時刻を調査した。その結果、出巣時刻は平均して日没31分後であり、さらに、周囲が早く暗くなる巣ほど出巣時刻も早まる傾向が認められた。次に、保護飼育個体を用いて常暗条件下での実験を行った。2個体を恒常的に暗い環境に置いたところ、出巣時刻は日ごとに徐々に後退した。このことから、本種の体内時計の固有周期は24時間よりわずかに長いことが示唆された。さらに、明暗周期を人為的に操作した環境下では、出巣時刻は消灯時刻(夜の開始)に同調した。以上より、ムササビは24時間よりやや長い固有周期(体内時計)を持ち、それが光によって同調・補正されている可能性が示された。また、高尾山薬王院における終夜観察データから鳴き声の回数を活動回数として分析し、保護飼育個体の活動回数と比較した。その結果、冬季には3回、春季から夏季には2回の活動ピークが確認され、季節による活動リズムの変化も示唆された。

 今後の課題として、まず徐々に暗くなるライトを用いた実験を行い、自然界に近い薄明条件が出巣時刻に与える影響を検証したい。また、ライトの強さを段階的に変化させ、どの程度の光量が出巣時刻を遅らせるのかを調べることで、観察時のライトや街灯がムササビに与える影響を評価し、ムササビに負担をかけない観察方法や、適切な人工光の強さの基準を提示できると期待される。


日本生態学会