| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-067 (Poster presentation)
ゴリラの行動は、個体の社会的立ち位置や個体間関係に影響されることが報告されている(Sweet&Cheyne, 2025)。飼育下のゴリラでは、成長や移動により、家族構成が変化する場合があるが、こうした家族構成などの環境の変化が行動に与える影響についての研究は多くない。京都市動物園で飼育されているニシゴリラ(Gorilla gorilla)はアルファオスである父モモタロウ(25歳)、母ゲンキ(39歳)、長男ゲンタロウ(14歳)、次男キンタロウ(7歳)が飼育されていた。しかし、2025年2月頃からゲンタロウはモモタロウとゲンキと隔離され、10月には上野動物園に移動した。また、11月にはゲンキが第三子を出産した。本研究では、こうした京都市動物園のニシゴリラの家族を対象に、家族構成の変化が、各個体の行動や社会的立ち位置にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。2024年8月〜2026年1月に計62時間(隔離前:14時間、隔離後〜ゲンタロウ移送:28時間、移送後〜出産:4時間、出産後:16時間)、フォーカルサンプリング法により観察を行い、行動を基本行動(食べる、移動、寝る、座る、立つ)、ひとり遊び、人との遊び、社会的な遊び、物遊びに分類した。結果、ゲンタロウについて、隔離前は人との遊びが1時間あたり2回程度であったのに対して、隔離後には1時間あたり10回程度に増加した。これは、モモタロウとの隔離を機に成年オスの自覚がより強くなったことで、人との遊びである「来園者を見つめる行動」が増加したためと考えられる。また、キンタロウについては隔離後に遊び行動自体が減少したが、移送及び出産のイベントの後には、隔離後と比較して有意に社会的な遊びが増加した(p < 0.05)。これは、キンタロウが赤ちゃんに興味を示しており、ゲンキに接近することが多くなったためと考えられる。今後は、第三子の成長に伴うさらなる家族構成の変化を観察し、社会的立ち位置や個体間関係への影響を調べていきたい。