| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-068 (Poster presentation)
ムササビ(Petaurista leucogenys)はリス科に属する日本固有の夜行性動物である.食性は植物食で主に樹葉を食べるが,野生下では季節に応じて摂食する樹種や部位を変化させることが知られている.先行研究では,秋季から春季における樹葉嗜好と遊離アミノ酸成分との関連が示され,甘味やうま味を呈する遊離アミノ酸を多く含む樹葉ほど摂食率が高い可能性が指摘されている.一方で,夏季の嗜好性やアミノ酸以外の要素については十分に検討されていない.そこで本研究では,春季から夏季におけるムササビの樹葉選択性の変化と,樹葉の物理的・化学的特性との関係を明らかにすることを目的とした.
学校にて保護飼育しているムササビ個体(都知事許可)を対象に複数樹種の樹葉を与え,樹種ごとの摂食量から選択傾向を評価した.また,樹葉の厚み,硬度,有機酸成分,遊離アミノ酸成分を測定し,選択性との相関を解析した.その結果,コハク酸含有量が多い樹葉ほど選択性が低く,樹葉の厚みとも負の相関が認められた.さらに,甘味を呈する遊離アミノ酸を多く含む樹種,および樹葉が硬い樹種の選択性が高い傾向が示された.以上より,ムササビは薄く,硬く,甘味を示す遊離アミノ酸含有量が多い樹葉を選好し,コハク酸を忌避することが示唆される.