| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-072 (Poster presentation)
群馬県北部に位置し、本州最大の高層湿原である尾瀬ヶ原では近年、二ホンジカ(以下、シカ)が貴重な湿原植生を荒らすことが問題となっている。これを受けて、尾瀬ヶ原におけるシカの生息状況を正確に把握するために、夜間にドローンを飛行させ、湿原全体をサーモカメラで撮影し、その画像を解析するといった手法が編み出されている。本校ではこの撮影を行っている福島大学食農学類の牧研究室とともに2024年8月に撮影を行った。撮影画像は1394枚と大量であるため、その解析に生成AI(画像解析モデルYOLO)を用いたが、そもそもシカの画像をどこまで判断できるのかという疑問が生まれ、YOLOのバージョンや解像度を変え、その結果をまとめた。
同研究室より提供していただいた過去3回の撮影データ4700枚をもとに、人間の目視によりシカと判断した物体を512頭分、アノテーションした。そして、この画像とアノテーション情報をもとに、異なるYOLOのバージョンと解像度でモデル学習を実施した。その後、人間による目視の結果と、バージョンごとの画像解析の結果を比較し、シカと判定した個体に対する判定確率も集計した。
その結果、目視とYOLOの解析が完全に一致した画像数が最も多かったのはYOLOv10m(解像度1280px)で、判定確率の平均値も高かった。一方で最も乖離したのは、YOLOv11m(同1280px)で、判定確率の平均値も低かった。しかし、同じYOLOv11mでも解像度を640pxに設定したものについては他と遜色ない結果となった。乖離が少ないと予想したのは最新のバージョンで解像度を高くしたYOLOv11m(1280px)だったが、実際は違った。このことから、完璧な答えを求めすぎるのは却って、判定を低下させる可能性があることが示唆され、YOLOによる画像分析には「ある程度の曖昧さ」が必要となることがわかった。