| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-084 (Poster presentation)
過去にも自然現象などの影響により大量絶滅が起きているが、現在は第6の大量絶滅と呼ばれている(生物多様性センター, 2025)。生物多様性の保全は私たちの身の回りでも等しく言える。神奈川県においてもフォッサマグナ要素の固有種が多く存在し、絶滅危惧種に認定されている植物も多くいる(田中徳久他, 2022)。生物多様性を保全していくためには、まずその植物の個体数や自生地環境を把握することが求められる。そこで、コイワザクラ(神奈川県絶滅危惧II類(VU))と、オトメアオイ(純絶滅危惧(NT))、カントウカンアオイ(希少植物)の自生地を調査し、生息適地モデルを作成し、今後の保全に役立てることを目的とした。
コイワザクラにおいては、過去の文献とは異なる新たな自生地を箱根駒ヶ岳付近で発見した。箱根駒ヶ岳、金時山、檜洞丸の在データによるMaxEntの分析では、存在し得ない地域にも自生する可能性が示された。より広範囲での在データを収集することにより、モデルの精度を高めていく必要がある。
カントウカンアオイは都市部の森林(金沢区や川崎市)にも自生地があり、山間部(乙女峠、大山)とのデータと合わせて分析すると、都市部の森林と山間部の森林との環境要因の差が大きく、モデルの精度(AUC)は山間部だけのデータと比べると低くなってしまった。都市部のデータ、里山地域のデータを増やすことで精度を上げることができると考えられる。
コイワザクラやカンアオイは種子を虫や重力によって散布するため、生息域を大きく広げることはできない。そのため、自生株はある程度限られた範囲で個体群を形成する。この限られた範囲のいくつかの個体群だけのデータでは局所的な分析しかできない。調査1年目は、文献を調べ、自生する個体を探すところから始まった。2年間である程度のデータを得ることはできたが、未調査の場所もある。今後も調査を継続し、より正確なモデルを作成し、植物の保全に役立てたい。