| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-092 (Poster presentation)
外来魚問題は国内各地で継続する環境課題であり、滋賀県琵琶湖においてもブラックバスやブルーギルなどの侵入種が在来生態系へ与える影響が長年指摘されてきた。一方で近年、駆除対象となった外来魚を廃棄するのではなく、資源として循環利用する試みが各地で検討されている。本研究では、外来魚を乾燥・粉砕して得られる魚粉を緑化用肥料として活用する可能性に着目し、その有効性と課題を整理することを目的とした。
魚粉は窒素・リンなどの主要養分に加え、アミノ酸やミネラルを含む有機質資材であり、植物生育の促進や土壌微生物活性の向上に寄与することが知られている。しかし、外来魚由来の魚粉に限定した場合の緑化資材としての有効性については、体系的な検証が十分に行われていない。本研究では既存文献および地域で実施されている試験的利用事例を整理し、外来魚由来魚粉の施用が植物生育および土壌環境に与える影響の評価枠組みを検討した。さらに、学校や地域の花壇での試験的使用事例をもとに、環境教育および地域参画の観点からの意義についても考察した。
現時点では、外来魚由来魚粉の緑化効果は事例的報告にとどまり、施用量や分解速度、土壌条件との相互作用などの定量的データは不足している。そのため、植物生育指標と土壌化学性の変化を統合的に評価する実証研究の必要性が示唆された。一方で、本資材の活用は駆除個体の廃棄量削減や資源循環の促進に寄与する可能性があり、外来魚問題に対する社会的理解を高める教育的効果も期待される。
以上より、外来魚由来魚粉の緑化利用は、肥料効果の科学的検証と安全性評価を前提としつつ、外来魚管理と地域資源循環を結び付けるアプローチとして位置付けられる。本研究はその基礎的整理を行うものであり、今後は圃場実験による定量的評価を進め、持続可能な地域環境管理への応用可能性を検討する必要がある。