| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-097  (Poster presentation)

バイオ炭施用が学校林の炭素収支に与える長期的影響の評価
Long-term evaluation of the effects of biochar application on the carbon balance of School Forests.

*仁野峻太朗, 工藤良史, 小山悠太(浅野中学・高等学校)
*Syuntaro NINO, Yoshifumi KUDO, Yuta KOYAMA(Asano high school)

 近年、地球温暖化による気候変動の影響が深刻化が懸念され、特に森林破壊や植物の炭素固定機能の低下に対する早急な対策と保全が強く求められている。
 本研究では、地球温暖化緩和策の1つでもあるバイオ炭(木材や生物の死骸を嫌気的条件下で加熱し炭化させたもの)を、校内の森林(神奈川県の鳥獣保護区に指定されている銅像山)の林床に散布し、土壌改良効果と森林における炭素隔離効果の長期的な検証を目的とした。2020年度に散布区と非散布区(15m×15m)を設置し、2025年度にいたるまで生態学的手法を用いて計測を行った。1年毎の樹木成長量(ΔB)と月ごとに採集した枯死脱落量(LF)の和を炭素固定量とした。また、炭素放出量は、土壌呼吸量を測定し、地温との相関から算出した。炭素固定量と炭素放出量の差から生態系純生産量(NEP)を推定し、バイオ炭の効果を検証した。
 散布区のΔBは、夏季の光合成活性が低下したと考えられる2023年、2025年において非散布区よりも高い傾向を示したが、2025年ではその傾向が小さくなっていた。また、LFでは例年と同様に散布区で高い傾向となった一方で、2025年における非散布区との差は、2024年のLFよりも小さい値となった。以上より、バイオ炭が森林の炭素固定量に寄与する影響が低下していることが示唆された。また、炭素放出量に関しては、2025年における散布区の温度呼吸曲線が例年よりも高い傾向を示した。これは炭素固定機能の促進によってLFが増加することで、土壌表層での分解量が増え、土壌微生物が低い温度帯でも活性化されたことが要因であると考えられる。
 以上より、バイオ炭の森林への散布は炭素固定機能を促進する一方で、その効果の持続期間は5年程度であることが示唆された。今後の展望としては、バイオ炭の再散布を実施することで、バイオ炭の継続的な活用について研究を実践していく。


日本生態学会