| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-101 (Poster presentation)
世界農業遺産「清流長良川の鮎」として知られる長良川のアユであるが,その漁獲量はピーク時の約20%まで減少している。長良川の天然鮎を確保するために重要なことの一つに,十分量の仔魚が河川を降下し,餌となるプランクトンが豊富な河口まで到達することがあげられる。そこで,仔魚降下の現状を把握するため,主な産卵場である金華橋地点から長良川河口堰までの約25kmの移動にかかる降下日数を,5地点で測定した流速を用いて算出した。その結果,河口までの降下日数は17.8日と算出され,河口堰運用以前と比べ約11日延長したことがわかった。
次に仔魚数調査,卵黄指数調査,及び仔魚無給餌飼育実験を行った。仔魚数調査では,3地点で仔魚をプランクトンネットで採集し,それぞれの地点の個体数を計測した。その結果,長良大橋地点の仔魚数は上流の穂積大橋地点の0.2~2.0%であり,羽島大橋地点の仔魚数は上流の長良大橋地点の0.2~4.0%であった。卵黄指数調査では,採集した仔魚の各個体の卵黄の大きさ(卵黄指数)を測定した。その結果,3地点ともに卵黄指数1,2が多く,金華橋から約8.8㎞と比較的産卵場に近い穂積大橋地点でも卵黄指数0の個体が検出された。無給餌飼育実験では,無給餌飼育下の8,12,14,18℃において仔魚の生存日数を調査したところ,それぞれ18,16,12,10日間で全ての仔魚が死亡した。
以上の3点から,降下の早期に卵黄を消費し,多くの仔魚が河口まで到達できていないと考えられた。また,仔魚採集と同時に測定した水温の平均は,11月が12.3℃,12月が10.1℃,1月が7.8℃であったことを踏まえると,仔魚が河口まで到達したとしても,大半の卵黄を消費している状態であると考えられる。今後,地球温暖化が進んだ場合,水温が上昇して河口まで到達できる仔魚がさらに少なくなることが懸念される。